目が覚める。
隠の瞳から涙が落ちた。
恐らく朧の……昔の夢を見た。本当に朧の過去なのか、それともただの夢なのか、隠には判断がつかない。
ただどうしようもなく、悲しい気持ちが沸き起こって、涙が流れた。
あれがもし本当だとして、あれだけ人のために戦ったのに、朧は封印されたということになる。
そもおかしいのだ。
人間を憎んでいない鬼が封印されているなど。何のために、なぜ、朧は封印されたのだろう。
『大丈夫か、隠』
そんな様子の隠を気にしてか、朧が話しかけてくる。野宿の最中だ。朧が見張ってくれていた。
「……平気」
『悪夢でも見たか』
朧の問いに隠は夢の話をした。
『……それはわしの記憶じゃな。体を共有してるからか、随分昔の記憶だがおぬしに流れたのか……ふぅむ』
「そういうものなの?」
『知らぬ』
朧にもわからない現象のようであった。
『だいたいわしらで体を共有しているという状態が前例がないに等しいのじゃ。どういう理屈で記憶が見れたのかはわからん』
最もな話だった。
「……ね、朧。聞いてもいい?」
『あぁ、良いぞ』
「どうやって封印されたの」
隠の疑問が夜の冷気に溶け込む。しばらく沈黙が続いて、やがて朧は口を開いたようだった。
『人間に宴に誘われて酒飲んで気分よく寝て、その後封印された』
隠は夢の記憶から、鈴音と法玄を思い出す。
「親しい人に騙されたってわけ」
『人間も人間で立場があるからのう。ま、良いのよ。お主と旅するの楽しいし』
隠は立ち上がる。
「ねえ、朧。もし体が戻ってくるとしたら何がしたい?」
朧は人間を恨んでいるのだろうか。今までの会話からはそういった感じはしないが、本当にそうなのだろうか。
ただ恨む権利はあると思う。そして復讐する資格も。
『いや別に切望するようなものはないが。そうさな』
霧が隣に収束して、小僧の姿を取る。
「お主、酒は平気だったかのう?」
「それがどうしたの」
「一杯、祝いも込めて付き合ってくれんか?」
「…………え」
言葉の意味が理解できず、朧を凝視する。朧はきょとんとした顔で、隠を見つめ返した。
「もしかして…………それがしたいことなの」
「おう」
「……そ」
「そんなごみを見るような目で見んでも」
「くだらなすぎて」
ため息を吐く。
「なぁ、隠」
「何」
「わしが復活した後も一緒に旅をしても良いかの」
「……好きにすれば」
朧が完全に復活できるかどうかはわからない。ただ、もし復活するとして確信を持って、一つ言える事がある。
朧が現在に完全復活したとしても、人に害をなす存在にはならない、ということだ。
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