「出発する」
一行は再び輸送車へ乗り込んだ。
——ブオォン——
ゆっくりと車体が動き出した。
崩れた高架橋が遠ざかる。
「お見事でした」
「何がだ?」
レートは前を向いたままクロスへ答える。
「先ほどの戦闘です」
「仕事だからな」
「仕事、ですか」
クロスは考えを巡らせる。
「一つ伺ってもよろしいでしょうか」
「何だ?」
「あなた方は」
レートたちを見ながらクロスは尋ねる。
「どなたに育てられたのですか」
「ゼロ・フォートレスたちだ」
レートの迷いない言葉。
クロスの表情が僅かに変わる。
「……なるほど」
それ以上は何も言わなかった。
「お腹空いたー……」
ノアは座席へ身体を預け、大きく伸びをした。
「お前なぁ」
レートが苦笑する。
「さっきまで撃たれてたんだぞ」
「だからだよ」
ノアは頬を膨らませる。
「頭使うとお腹空くんだから」
「いつものことだ」
クランツが笑った。
張り詰めていた空気が和らぐ。
輸送車は黙々と山道を進んでいく。
その頃。
薄暗い部屋。
机の上に一枚の地図。
——カタン——
黒い駒が何かを探るように動く。
『確認完了しました』
『報告を』
『クロス・マージンとの接触を完了』
——カタン——
『レート・グロウス。ノア・ルクス。クランツ・タークス』
手が駒を前へ進める。
『障害は、この三名のみです』
『ORPHANも確認済みか』
『はい』
『監視を続けろ』
——ピッ——
黒い駒が、物言わぬ盤上に残される。
第12区——SERAPH
輸送車の窓から、一つの巨大な都市が姿を現す。
高くそびえる外壁。
整然と並ぶ建造物。
クロスは前を見据えた。
「ここが、SERAPHです」
「おー……」
「これまた、でかい街だな」
レートとノアが窓へ顔を寄せる。
「二人とも、門を越えるまでが依頼だ」
クランツも窓から外を見る。
輸送車はそのままゲートへ向かった。
門番が車両へ近付き、運転席を覗き込む。
「クロス商会長!」
慌てて門が開かれる。
——ゴゴッ——
重厚なゲートがゆっくりと動き始める。
その先。
一人の男が立っていた。
黒いスーツ。
一本の杖。
表情が穏やかな老紳士。
「お待ちしておりました」
男はゆっくりと杖を胸元へ寄せる。
続けて、洗練された一礼をした。
「あんたは?」
「申し遅れました。トレイルと申します」
「私の執事であり、クロス商会を支える優秀な部下です」
「以後、お見知りおきを」
「……ああ。よろしく」
依頼は終わる。
そして。
新たな取引が、今まさに始まろうとしていた。
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