三人が同時に動いた。
「っ!?」
侵入者の一人が異変へ気付く。
——ダッ——
レートは地面を蹴る。
闇を裂くような踏み込み。
「速っ!?」
——ドッ——
レートの拳が腹部へ突き刺さる。
男の身体が浮く。
——ダンッ——
そのまま男は管理棟の壁へ叩き付けられた。
「…………」
一人。
戦闘不能。
同時刻。
反対側。
「右」
クランツが呟く。
侵入者が振り返る。
——パンッ——
——スッ——
「なっ!?」
クランツは半歩、身体をずらし躱していた。
「遅い」
——ドガッ——
蹴りが相手の手首を弾く。
——ゴッ——
流れるような肘打ち。
「かはっ!?」
男の意識を刈り取る。
——ドサッ——
残る人数。
二人。
「見つかった!」
その叫びと同時。
二人は同時に発砲する。
——パンッ——
——パンッ——
「甘い」
────────────────────
GAIN : BARCA
────────────────────
——パンッ——
——パンッ——
ゼロの正確過ぎる射撃。
——カラン——
——カラン——
侵入者のGAINだけが弾き飛ばされる。
「ぐっ……!」
武器を失った二人が目を見開く。
「終わりだ」
ゼロが踏み込む。
——ドンッ——
「ぐほっ……」
片方の鳩尾へ拳。
——ドッ——
「がっ……」
もう一人の首筋へ掌底。
ほぼ同時。
二人は静かに地面へ倒れた。
「…………」
わずか十数秒。
レートが周囲を見回す。
「終わったか」
クランツは倒れた四人を確認する。
しゃがみ込み男の懐を探った。
「……完全な捨て駒だな」
何もない。
身分証も。
所属章も。
通信端末すら存在しない。
「何もねえな」
レートも一人を確認する。
ゼロが最後の一人を見下ろす。
「プロとは思えん」
「本命は別にいる」
クランツも頷く。
——ピッ——
管理棟の奥。
執務室から、小さな電子音が響いた。
「!!」
——ダッ——
レートが反射的に走り出す。
ゼロの表情が初めて動く。
「……保管庫だな」
クランツは辺りを見回す。
「やはり、こっちは囮か」
——バンッ——
執務室の扉を開く。
机。
棚。
すべて元のまま。
荒らされた形跡はない。
クランツとゼロが合流する。
「誰もいなかった」
レートが二人に告げる。
「ゼロ。確認を」
「ああ」
クランツに促され、ゼロはそのまま保管庫へ向かう。
——ピッ——
────────────────────
AUTHORIZATION : CONFIRMED
────────────────────
——ピピッ——
────────────────────
LOCK : RELEASED
────────────────────
——ギイッ——
重い扉の先。
「……ある、か」
銀色の未登録トークンは、保管されたままだった。
「はぁ……間に合ったか」
レートは安堵の声を漏らす。
「いや……手を付けなかったと見ていい」
クランツがゼロを見る。
「何か仕掛けていたのか?」
「これだ」
クランツとレートが目を凝らす。
保管庫の中に、薄っすらと線状の傷があった。
「保管の際、この線の確度に合わせてケースを置いている」
「またアナログな手法だな」
「まあな」
レートの言葉にゼロが笑う。
「置いた角度に変わりはなかった。そういうことか?」
「ああ。変わりはなかった」
「つまり……奴らの狙いはこいつじゃない」
クランツが眉をひそめる。
「またか」
レートが口を開く。
「また、値踏みか」
「例の奴らか?」
ゼロが二人に問う。
「おそらくな」
「俺たちの戦力。行動。それを見に来たと考えていいだろう」
「……お前らも面倒くさいのに絡まれたな」
ゼロがため息をつく。
——カチャ——
レートは静かにGAINを収めた。
「本当にな」
ゼロは保管ケースに視線を向ける。
「ORPHANでも、何かが動き始めている」
「何にしても対応が必要だ」
クランツが冷静に思考を巡らす。
「レート。クランツ。先ずは安全最優先だ」
「わかってる」
「了解」
「お前らの返事は信用ならん」
「ひでえなぁ」
レートが不本意そうな顔をする。
三人の笑い声は夜に溶けていった。
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