ORPHANへ戻った頃には、空はすっかり夜へ変わっていた。
街には、いつも通りの灯りが並ぶ。
子供達の笑い声。
屋台から漂う香ばしい匂い。
OBLIVIONの静寂とは違う、生きた街の音。
「やっぱ落ち着くわー」
ノアが大きく伸びをする。
「OBLIVIONって息苦しいんだよねー」
「空気じゃない」
クランツが淡々と歩く。
「街そのものだ」
レートも小さく頷いた。
「あそこは、生きてる感じがしない」
三人は孤児院の隣にある小さな管理棟、ゼロの執務室に向かった。
——コンコン——
「入れ」
——ギィ——
扉を開けると、ゼロは机へ向かったまま端末を操作していた。
「戻った」
レートが回収ケースを机へ置いた。
ゼロは一枚ずつSBTを確認していく。
——ピッ——
「登録済み」
——ピッ——
部屋に端末の電子音が響く。
「これで全部だ」
レートがそう言った時だった。
「……ゼロ」
クランツが自分のポケットから差し出した。
——コトッ——
静かに机へ置く。
銀色のSBT。
番号も刻印も存在しない。
ゼロの手が止まる。
「……これは?」
「OBLIVIONで見つけた。検索したら——」
ノアが肩を竦める。
「UNREGISTEREDだった」
クランツが静かに頷く。
「俺も同じ結果だ」
「……」
ゼロは無言のまま銀色のSBTを手に取った。
「ふむ……」
表面をゆっくり眺める。
——ピッ——
─────────────────
>> TOKEN SEARCH
SEARCHING...
SEARCHING...
─────────────────
>> TOKEN SEARCH
STATUS : ERROR
RESULT : UNREGISTERED
─────────────────
ゼロが端末をスライドする。
「依頼書では」
─────────────────
>> RECOVERY REQUEST
TARGET
UNKNOWN TOKEN
LOCATION
04 DISTRICT : OBLIVION
─────────────────
画面を最後までスクロールする。
銀色のSBTについての記載はない。
「……対象外だな」
レートが口を開く。
「どうする?」
「一旦、こちらで預かる」
ゼロは保管ケースを取り出し、銀色のSBTを収めた。
「ZIGZAGへ渡す物じゃない」
「了解」
レート達も特に異論はなかった。
「そういやさー」
ノアが椅子へ腰掛ける。
「最近、ZIGZAGの依頼多くない?」
——ピッ——
ゼロは端末を閉じた。
「ああ」
「儲かってんの?」
「違う」
「違う?」
「……戦力を集めている」
ノアの表情から笑みが少しだけ消える。
「へぇ」
「理由は?」
クランツが尋ねる。
「まだ分からん」
ゼロはそれ以上続けなかった。
「少なくとも」
保管ケースへ視線を向ける。
「面倒事の匂いはする」
いつもの三人。
いつもの帰り道。
「お腹空いたー」
ノアがボソリと言う。
「さっきポテチ食ってただろ」
「ポテチはノーカロリー」
「お前なあ……」
レートが苦笑する。
クランツもため息を吐いた。
管理棟。
静かな執務室の保管ケースの中。
銀色のSBTが、何も語らず眠っていた。
それが何を意味するのか。
まだ、誰も知らない。
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