それから始まった私にとっては第三回戦。
林川さんの指示はポンチーを多用したものだったけど、やっぱりそこにはちゃんとした考えがあって見境なく出来るものをしてるってわけじゃないらしい。プロだし当たり前と言えばそうだけど、何だか改めて感嘆の声を心の中で上げていた。
「ポン」
林川さんに言われた通りにしてるだけだけど、まるで自分が巧みにしてるかのようにこの麻雀は上手く進んでいた。
「やっば! これは最強。はい、リーチ」
でも先に坂井さんがリーチを掛ける。これまでで一番早いリーチだ。
「はやぁ」
「えぇーズルじゃない?」
まだ捨て牌が一行も終わらぬ内のリーチに両側から不平不満が飛ぶが坂井さんはどこ吹く風。
でもこっちのも結構整ってきてるし、てっきり私はこのまま突き進むのかと思ったけど林川さんは少し小回りをした。
「これはこれだね」
「これですか? こっちじゃなくて?」
「そう。これはちょっと危ないからね」
何が危険なのか私には分かるはずもない。でもプロがそう言うんだから間違えないと私はその指示に従った。
「ポン――それ取ろうか」
「はい」
「それチーしようか」
「チー」
ポンは林川さんが言って、チーはする時に教えてくれてこれまで通り私が一応口にしてやった。
「おっ!」
するとそんな声を上げたかと思うと林川さんは私にその引いた牌がツモだと教えてくれた。
「ツモ」
あれよあれよという間に終わってしまって実感がないまま、言われた通り引いた牌に天井を仰がせて手牌を見せる。それはまだ坂井さんのリーチから一周もしてないこれまでで一番早い段階でのアガリだった。
「はやっ!」
思わずといった様子で声を上げ立ち上がる坂井さん。更に両側からも公開された牌へ一驚を喫する視線が向けられていた。
「えぇー。早過ぎでしょー」
「しかもタンヤオだけじゃなくてドラドラじゃん」
これがポンチーの強みってやつなのかも。何だかその最高峰を間近で体験したような、そんな気がした。
坂井さんのリーチも早かったけど、それを追い抜く速度でのアガリ。一番あっという間でもう一回ぐらい一緒にさせて欲しい気持ちもあったけど、取り敢えず私は次の席へ。
「よろしくねー」
「お願いします」
良い意味で子どものように表情を変えては楽しそうに麻雀をする土倉さん。まるで足早に過ぎ去る四季を内に宿してるかのように感情豊かな人だ。
「よしよし。んー。とりあえずはこれからかなぁ」
パッと見た感じだと双子の牌が二組あるぐらいであまり揃っているようには見えない。そして今回もまた後ろから指示を貰いながら私は傀儡のように――って言うのは悪い言い方かもしれないけど、言われた牌を手にとっては捨てていく。
それは二行目に入った頃。何だか気が付けば双子の牌が増えてきたような気がする。連続した数字か同じ牌を三つのはずだけど、私の前に並ぶのは双子が四組。後は文字の牌と殆どが連続してない数字だ。心の中で小首を傾げながらも手を進めて言っていると。
「おぉー! 来たぁー!」
また双子が増えた。これで五組目だ。後方で嬉々とする土倉さんと内心で小首を傾げる私。すっかり手元の牌は二人一組で仲良さげに組んでいて、真ん中にはまだ一人ぼっちの牌が三つ、互いに手を取り合って孤独を乗り切る様に身を寄せ合っている。
それを見つめながら私は少しだけ学校での自分を思い出した。昔から体が弱くて余り学校にも行けてなかったから、グループを作る時なんかに声を掛けられる人がいなくて。別にそこまで人見知りって訳じゃないんだけど、仲良く話すみんなを見てると割って入るのは何だか気が引けたりして。
直ぐにお友達を連れてきてあげるからね――私はその三人を見つめながら心の中で一人呟いた。
でもこの台には物欲センサー機能でも搭載されているのか、単に意識し始めたからなのか、残りは中々揃わない。
「チー」
「ポン」
そして二行目の中盤。私の焦燥を煽るかのように林川さんがチーをして捨てたのを坂井さんがポン。私の番は飛ばされてしまった。
「あぁーあ。今の嫌になっちゃうねぇ」
表情には多少なりとも出ていたかもしれないが言葉にはしなかった私の後ろで、土倉さんは溜息交じりの声を出した。その声に振り向けば少し覗き込む落胆的な表情と目が合った。
「いやー。ごめんねっ」
一方でその声に視線を坂井さんへやればどこかいたずらっ子的な表情を浮かべていた。正直に言えば確かに早く次を引きたい。でもここで土倉さんにノって一緒に何かを言うには私はまだこの三枚の牌に近かった。
だけどまるでそれが乱数調整であるかのように次に引いた牌はあの孤独な牌達の一人。
「はぁあー。なるほどねぇ。――それじゃあ、こっちとこっちどっちがいい?」
後ろから伸びた手は三つの内の残り二つを指差した。これが何て言うのかは分からないけど、きっと残った方が揃えばいいんだろう。と言ってもどっちの方がいいかなんて私には全く分からない。だから直感と言えば聞こえはいいが、つまり適当に選んだ。
「こっちで」
「それじゃあ残った方を捨ててリーチ!」
土倉さんは既に用意していた棒を置きながら力強く言った。
「はい!」
それに答え私も力を込めて返事をし、牌を手にとっては少し慣れ始めた捨てるという作業へ。今回はリーチだから横にして――。
「あっ!」
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