映画はどれも楽しかったけど、連続で観てると同じくらい疲れも溜まってたらしく、私は気付けば眠ってしまっていた。
いつ眠ったかも分からないまま目が覚めたのは、流れっぱなしの映画の音の海をカシャカシャと如何にもなカメラ音が泳ぐ真っ只中。目覚めたもののまだ夢の霧は辺りを薄らとぼかしていた。
「んー」
抵抗する様な声を零しながら少し無理やり目を開く。天井から降り注ぐ光の雨に眉を顰めながら音の方へ視線を向けてみると、タブレットで独り言の様に私の知らない物語が語り続けられていた。
でもその向こう側では、人影がカメラの音の後に何やら動いている。私は目のピントを合わせようと何度か瞬きをした。
そこに居たのは、スマホを構えた菜月さん。
「……あれ? 菜月さん? 何してるんですか?」
眠気の重みにに何度か目を閉じながらも私は呟く声で尋ねた。
「え? 微笑ましい写真を撮らせて頂いてます」
そう言いながらカシャリ。
私はそんな音を聞きながら少しだけ晴れてきた頭を動かし、視線を隣へ。ずっと何かに凭れていた感覚はあったけど、夢現な感覚の中であまり気にしては無かった。
そしてゆっくりと見遣ると――そこには同じ様に座りながら眠る春人君の姿が……。その瞬間、離れる私の中へ烈風が駆け抜け、さっきまでの霧が一弾指の間に晴れるのを感じた。意識は鮮明に世界を捉え、同時にさっきまでの自分の状態を理解した。
不可抗力とは言え、春人君に凭れ掛かり眠ってしまっていたかと思うと段々、奥底から込み上げてくる熱っぽさを感じる。それこそそのまま頭上から噴火してしまいそうな熱さだ。
「初々しいねぇー」
そんな私を見てニヤニヤと嬉しそうな微笑みと声の中、菜月さんは更にもう一枚シャターを切った。
「止めて下さいよ」
するとそんな私達の声で春人君が目を覚ました。ついさっきまでの私同様にその表情はまだ眠そう。そんな春人君も寝惚け眼を擦りながらタブレット越しの菜月さんに気が付いたらしい。
「あれ? 菜月さん?」
「おはよー」
陽気に手を振りながらスマホをポケットへ仕舞う菜月さん。
「でももう自分の部屋に戻る頃だよ」
そう言って菜月さんは時計をしてない手首をトントンと指で叩いて見せた。
一方、その言葉に一度大きく欠伸をした春人君はベッドから降りた。それから私の方へ。
「じぁまたね」
「またね」
お互いに手を上げ別れの言葉を交わすと春人君はまだ眠気の絡む足取りでドアへと歩き出した。
「夜もちゃんと寝るんだぞー」
最後は菜月さんに見送られ春人君は自分の病室へと戻って行った。
すると、菜月さんがさっきまで春人君がいた隣へ滑り込む様に座ってきた。ニヤニヤとその表情は何やら嫌な予感を漂わせている。
「何ですか?」
「んー?」
この時間を楽しんでいるんだろう、菜月さんは表情はそのままわざとらしくか首を傾げて見せた。
「それで?」
「え?」
「好きなの?」
「えっ?」
「春人君の事」
「えぇっ!?」
何を言うかと思えば、余りにも唐突な事を当たり前のように口にする菜月さん。私は反射的に声を上げていた。
「な、何ですか? いきなり」
「えー。だってほら」
スマホを取り出すと何度か操作して画面を私に見せてきた。そこに映し出されていたのは私が起きる前。多分、一枚目の写真だ。何も知らずに眠る私は、春人君に凭れ掛かるだけじゃ無くて(凭れ掛かっている方の)腕へ抱き付くように手を乗せている。
それは見るてるだけで恥ずかしくなってくる写真だった。
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