花見をしたり、家でゴロゴロしたり、買い物したり、家で映画やドラマを観たり、遊びに行ったり。この五日間はまるで昔に戻ったみたいでほんとに楽しかった。しかもこれでまたお別れじゃなくてこれからも一緒に居られる。ほんとに夢のようだ。
「なーにニヤニヤしてんの?」
共通の休日、最終日。あたし達は夕日に焼かれた海へ来ていた。
そして仲良く砂浜を歩いていると陽南はそう言いながらあたしの頬を突く。
「別にニヤついてない……し」
バレてることは分かってたけど咄嗟に顔を手で隠して逸らしたのはちょっと恥ずかしかったから。
だけど夕日のおかげで少し赤面しているのはバレないだろう。
「あっ蓮姉、顔赤くなってる」
だけど顔を覗き込んできた桃奈に指摘されてしまった。バレてた。
「うるさい」
「相変わらず蓮は可愛いなぁ」
そう言いながら陽南は肩を組むようにあたしを抱き締めた。
「僕もー」
「よーし! おいでー」
それを見た桃奈が駆け寄ると片腕を広げ受け入れた。陽南はあたしと桃奈を、桃奈はあたしと陽南を、あたしはまだ赤らんだ顔を隠していた。
「私の可愛い妹達。いつまでも大好きだよ」
「僕も陽南姉と蓮姉が大好き―」
少し遅れてあたしも二人の背に手を回した。そしてすっかり夕日の赤さだけに染まった顔を桃奈同様に陽南の胸に埋める。
「あたしもお姉ちゃんと桃奈が大好き」
あたし達は波の音の中、暫く三人で抱き締め合っていた。
それから適当な所に腰を下ろすと三人並んで海を眺めた。陽南と桃奈に挟まれて座りながら見る海はとっても綺麗でどんな絶景にも勝るんじゃないかって思う。
とにかく今は胸が幸せで一杯。その重さに耐えかねたようにあたしは後ろへ倒れ寝転がった。
「ずっとこのままだったらいいのに」
無意識に呟いた言葉に陽南と桃奈が顔を覗き込む。
「ずっとこのままだよ。どれだけ離れたって、二人は私の可愛い妹だから」
「そうだよ。これからもずっと二人は僕の優しくて大好きなお姉ちゃんだよ」
あたしは二人の手をそれぞれ握った。
「なんか。暫く離れ離れで会えなかったからこの時間が夢みたい」
「本当に夢かもよ?」
冗談っぽくそう言う陽南の顔を一度見ると視線を桃奈へ。そして昼間から夜へと移り変わろうとしている狭間の幻想的な空へと向けた。
「それでもいい。例え夢でも覚めなければそれでいい。ずっとこのままでいられるなら」
あたしは導かれるように目を閉じた。
両手に感じる二人の手は柔らかくて温かい。もう離したくない。そう思える程に優しかった。
「蓮」
「蓮姉」
二人の声が聞こえる。そろそろ帰るのかな? なら目を開けて起き上がろう。
あたしはゆっくりと目を開けた。
だけどあたしの目に映ったのはさっきとは全く違う光景。陽南と桃奈があたしの顔を覗き込んではいたが、その表情は目を見開き愕然とした様子。しかも二人の向こう側にあるのは夕日に焼かれた大空ではなく白い天井。
「第5話」
「良かった!」
「蓮姉ぇぇぇ!」
何が何だか分からず一人世界に置いてけぼりにされているあたしは他所に感情を爆発させながら二人は勢いよく抱き付いて来た。
泣いてる? ここは? 疑問だらけのあたしは抜け殻のようにされるがまま。
「えっ? ここは?」
そんな絞り出すようなあたしの言葉に離れた二人は頬に涙を伝わせながらも笑みを浮かべていた。
「病院だよ」
「え? なんで? 海は?」
「海? 何言ってるの? 蓮姉?」
桃奈の話によるとあたしは桃奈と一緒に遊びに出かけてたらしい。その途中で桃奈を庇って事故に遭ったとか。それで百七十日間眠り続けていた。だけど急にあたしの手が動いて驚いたんだって。
どうやらあたしの知っている事実は少し違うらしい。あたしの手は届かなったはず。だけど、本当は届いてて事故に遭ったのも眠り続けていたのもあたし。訳が分からなくて頭はぐちゃぐちゃだったけど一つだけハッキリしていることがある。
――桃奈じゃなくて良かった。そのことだけはホッと胸を撫で下ろせる。
それからまるで未来予知でもしてたみたいに先生が来て検査で少し入院することになった。
* * * * *
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