レートは黒いカードを指先で挟み、そのまま高架橋の先を見据えた。
「行くぞ」
三人は車に戻らず、同時に歩き出す。
クロスも黙って後に続いた。
崩れた階段を登る。
錆び付いた鉄骨。
割れたコンクリート。
ノアが辺りを見回した。
「……誰もいないね」
「いや……」
クランツは周囲を警戒したまま答える。
「ようこそ」
背後から声が響く。
「っ!?」
全員が一斉に振り向く。
そこには一人の男が立っていた。
「おやおや」
黒いロングコート。
顔を覆う無機質な仮面。
年齢も表情も分からない。
「そんなに警戒なさらなくても」
その佇まいは異様に自然だった。
まるで最初からそこにいたかのように。
——ザッ——
「お前がパーティーの主催者か?」
レートが低い声で男へ向き合う。
「いいえ。私は招待状を届けただけです」
男は首を横へ振る。
「じゃあ、アンタ誰?」
ノアが眉をひそめる。
「ふふっ」
男は笑った。
「その質問に答える権限はありません」
「お前は使いか」
「そう思いたければ、それで構いません」
クランツの言葉を男は否定しない。
「目的は何です」
クロスは男を見つめる。
仮面の男がゆっくりとクロスへ向く。
「あなたです」
「え?」
ノアが思わずクロスを見る。
「荷物ではないのですか」
「興味ありません」
男は即座に答える。
「我々が望んでいるのは、あなたと話す機会です」
「……やはり、私ですか」
「クロス商会長」
男は言葉を続ける。
「いかがでしょうか」
クロスは首を横へ振る。
「お断りします」
「……でしょうね」
男はその返答を予想していたように頷いた。
「だからこそ、お迎えに上がりました」
悠然とした姿。
淡々とした言動。
「ずいぶん強引だねー」
ノアが小さく舌打ちする。
「商人は時間を大切にします」
男は初めてノアへ視線を向けた。
「我々も同じです」
男はゆっくりと腰へ手を伸ばした。
レートの目が細くなる。
「クランツ。ノア。クロスの安全を最優先」
「「了解」」
クランツは重心を落とし構える。
ノアはGAINへ手を添えた。
男は武器を抜かない。
代わりに。
通信端末を取り出した。
——ピッ——
『接触完了』
そして、堂々と告げる。
『HOSTより報告』
男は再びレート達を見渡した。
『対象との対面を完了しました』
——ピッ——
「ふふっ」
仮面の奥。
笑い声が漏れる。
「それでは、パーティーを始めましょうか」
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