輸送車は迂回路へ入る。
速度を落としながら山間の道路を進んでいく。
陽は差しているはずなのに、どこか薄暗い。
ノアが辺りを見回す。
「……何かやな感じ」
レートも周囲へ視線を走らせる。
「見通しが悪いな」
クランツは返事をしない。
スピードを緩めた車内から周囲を見渡す。
その目線が止まる。
「…………」
「どうした」
レートはクランツへ声をかけた。
クランツは顔を上げる。
視線の先は高架橋。
さらに、その奥。
「静かすぎる」
鳥の声。
瓦礫が転がる音。
何一つ音がしない。
「……確かに」
ノアも笑顔を消す。
「停止しろ」
レートは運転手へ声をかける。
——キイッ——
運転手がブレーキを踏み、エンジンだけが低く唸っていた。
——パァン——
乾いた銃声が谷へ響く。
輸送車の前方数メートル。
——ガギィン!——
アスファルトを砕き、小さな火花を散らした。
「狙撃っ!?」
ノアが身を低くする。
——ダッ——
レートは即座に外へ飛び出し、瓦礫の裏に隠れる。
「威嚇だ」
「ああ。当てる気なら、今ので終わってる」
クランツも頷く。
「クランツ。ノア。敵影は?」
「射線元にはいない」
「こちらからも見当たらないよ」
誰も姿を見せない。
「向こうも慎重だな」
「ああ」
レートたちが対応を考えてる最中。
——バタン——
クロスはゆっくりと輸送車から降りた。
「おいっ!?」
レートがクロスに向かって叫ぶ。
「出るな!危険だ!」
「……いいえ」
クロスは首を横に振った。
「これは交渉です」
レートとクランツがクロスを囲むように駆け寄る。
「交渉?」
レートは眉をひそめた。
「道を塞ぎ。迂回させ、そして撃たない」
クロスは銃痕へ目を向ける。
クランツも同じ結論へ至る。
「目的は荷じゃない。俺たちを止めてる」
「はい。本当に襲うなら、もっと前に終わっています」
「とはいえ、いきなり車から降りるのはやり過ぎだ」
クランツがクロスにへ注意を促す。
「でも、皆さんが守ってくれるのでしょう?」
「まあ、そうだけどよ」
レートはクロスの言葉に頭をかく。
ノアの視線の先。
「っ!?」
一瞬、先ほどはいなかった姿を捉える。
黒いフード。
仮面。
「2時の方向っ!!」
ノアが叫ぶ。
「っ!!」
レートとクランツが振り返る。
「…………」
しかし、そこにはもう誰もいない。
誰かの姿があった高架橋の上。
レートが警戒しながら近付く。
そこには、壁に一枚の黒いカードが突き刺さっていた。
黒いカードには白い文字。
WELCOME
「パーティーの招待だな」
クランツが呟く。
「ああ」
レートはカードを見つめたまま答える。
「せっかくの招待だ。顔見せに行くか」
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