輸送車は街道を進んでいく。
一定の速度。
一定の間隔。
荷台へ腰掛けたノアが、退屈そうに空を見上げている。
「平和じゃん」
「そう思えるなら何よりです」
クロスが笑う。
「前方、異常」
運転手の声が響く。
輸送車が速度を落とす。
——バタン——
レート達の目の前には、大量の瓦礫。
崩れ落ちた高架道路の残骸が、街道を完全に塞いでいた。
「あらー……完全に通れないねー」
ノアが思わず声を上げる。
レートは崩落現場を見つめる。
「自然崩落か」
「いや」
クランツが警戒しながら瓦礫へ近付く。
一つのコンクリート片へ手を添えた。
——スッ——
表面を指先でなぞる。
「ほぼ間違いなく」
削れた跡。
押し潰された形状。
「壊されている」
周囲へ視線を走らせる。
「え?」
ノアが思わず声を上げる。
「崩れたんじゃない。崩した」
「分かるのか」
レートも瓦礫へ近付く。
「ああ」
クランツが頷く。
「自然なら散り方が違う。これは、道を塞ぐために作られている」
——ピッ——
─────────────────
>> ROUTE CHECK
CURRENT LOCATION
04 DISTRICT : OBLIVION
PRIMARY ROUTE
STATUS : UNAVAILABLE
SEARCHING ALTERNATE ROUTE...
SEARCHING...
─────────────────
>> ROUTE UPDATE
NEW ROUTE
BYPASS : CONFIRMED
STATUS : ACTIVE
─────────────────
「予定ルートは使えませんね」
クロスは端末を操作する。
青いルートが消え、新しい道が表示された。
「こちらへ迂回します」
ノアが画面を覗き込む。
「結構遠回りだね」
「はい」
クロスは淡々と答えた。
「ですが、ここを通るしかありません」
「……誘導されてるな」
クランツは地図を見つめたまま呟く。
「ああ。俺もそう思う」
レートも同じ結論へ辿り着いていた。
「私もそう思います」
全員が理解していた。
誰かがこの輸送隊を見ている。
——ピッ——
端末から地図が消える。
「それでも進みます」
レートがクロスに視線を向ける。
「積荷には期限があります。物流は止められません」
その言葉に迷いはない。
「分かった。護衛を続行する」
輸送車はゆっくりと方向を変える。
本来の街道を離れ、新たなルートへ入っていく。
その姿を、遠くの丘から見下ろす影。
『対象、迂回ルートへ移行』
黒いフードの人物は双眼鏡を下ろし、通信機へ口を開く。
『続けろ』
通信機の向こうから、低い声が返る。
『了解』
フードの人物が応える。
誰にも気付かれることなく、輸送隊とは別の道を歩き始めた。
誰かの描いた盤面へ。
護衛任務は確実に導かれ始めていた。
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