翌朝。
管理棟の執務室には、いつもの三人が集まっていた。
ゼロは端末へ視線を落としたまま口を開く。
「依頼だ」
「今回は早いねー」
ノアが椅子へ腰掛ける。
レートは静かにゼロを見た。
「内容は?」
「護衛だ」
三人が同時に目を瞬かせた。
「護衛?」
ノアが首を傾げる。
「珍しいな」
クランツが呟いた。
ゼロは端末を机へ置く。
——ピッ——
─────────────────
>> ESCORT REQUEST
CLIENT
CROSS COMPANY
LOCATION
17 DISTRICT : ORPHAN
─────────────────
「クロス商会?」
ノアが画面を覗き込む。
「どこ?」
「物流組織だ」
ゼロは短く答えた。
「各地区を繋ぐ輸送を担っている」
「物流かぁ」
ノアは納得したように頷く。
「つまり荷物持ち?」
「違う」
クランツが即座に否定する。
「市場が動く限り、物流は止まらない」
ゼロも頷いた。
「止まれば各地区は孤立する。市場の血管だ」
レートは端末へ目を落とした。
「護衛対象は?」
ゼロが画面をスライドする。
─────────────────
>> ESCORT REQUEST
TARGET
CROSS COMPANY
─────────────────
「人物名じゃない?」
ノアが首を傾げる。
「正式な依頼は現地で説明される」
ゼロは立ち上がった。
「依頼主はすでにORPHANへ到着している」
「現地集合だ」
市場は今日も賑わっている。
レート達は市場を抜け、そのままORPHANの東ゲートへ向かう。
巨大な搬入口。
そこには見慣れない大型輸送車が停車していた。
濃紺の車体。
側面には銀色の紋章。
二本の線が交差するような意匠。
その下には、小さく刻まれた文字。
CROSS COMPANY
「おー……」
ノアが思わず声を漏らす。
「デカい」
「この規模は初めて見るな」
クランツも車体を見上げる。
——バタン——
一人の青年が輸送車から降り立った。
年齢は二十代後半ほど。
整ったスーツ姿。
胸元にはCROSS COMPANYのバッジ。
青年は三人を見ると、柔らかく微笑んだ。
「お待ちしていました」
穏やかな声。
「ORPHANの依頼屋、HODL BOLLINGERの皆さまですね」
「ああ」
レートが一歩前へ出る。
青年は軽く頭を下げた。
「クロス商会長、クロス・マージンと申します。本日は、皆さんに私の護衛をお願いしたい」
クロスは輸送車へ視線を向ける。
その表情から笑みが消えた。
「今回の荷は……」
ゆっくりと息を吐く。
「少々、厄介でして」
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