目を開ける、ここまで無警戒に寝たのはいつぶりだろう。魔物を片付けておいたから襲撃はなかったみたい。
自分の内側に意識を向けるとずいぶん魔力が戻っている。これくらいあれば、あの子の治療は可能でしょう。見た目が悪いから自分の傷も軽く治しておこう。
キノコは色とりどりのものがしっかり生えている。この成育だと一晩までではないが、そこそこ時間は経っていたようだ。
いくつか、生でも食べられるキノコをもいでから抱えてルヴェリーの所に戻る。
もぞもぞと動くルヴェリー。貫頭衣は、はだけて床に落ちている。身体を丸めて痛みに耐えている様子がうかがえる。
痛かったよね、私の力が足りなかったばかりに…………申し訳なさが心を抉る。
早く治してあげよう。
「おきた〜」
驚かさないように優しく声かけをする。
「あなたが助けてくれたの?」
私はゆっくりと頷く。そして、キノコを脇に置くと、ルヴェリーの横に屈み込む。
手をかざし再生の魔力回路に魔力を流し込んでいく。包帯を巻いた時の火傷の状態を思い出しながら少し過剰なくらいの治療を行っていく。
あそこまで酷い火傷は普通の自然治癒力を高める治癒魔術だと跡が残る。今回は魔術で起こってしまった事象を巻き戻し、再生を行う。
『塗り替えられる世界』という私オリジナル世界級魔術を対人に落とし込んだ『逆行治療』を行使する。
極端に言えば、死もなかった事にすることも可能。その分、魔力も大量に使う儀式魔術扱いなので通常なら数百人が行使するレベルらしい。
まぁ私でもごっそり魔力を持っていかれてしまう。しかし、出し惜しみは無しだ。女の子の身体に傷を残すなんて絶対に嫌だから、全力の治療する。
「まりょく〜、もどった〜」
すぐに治してあげられなかった負い目を感じながら謝罪の意味を込めて言葉をかける。
「助けてくれて本当にありがとう」
そんな事言わないで欲しい。
すぐに治してあげれなかった、あんなことになる前に駆けつけてあげられなかった。しかも、魔力放出の影響を軽視して空間跳躍に失敗。
すぐに帰してあげられてない。申し訳なさすぎて、とてもではないが感謝なんか受け取れない。
なんとか、謝罪と現状を伝える。気づかれることはないだろうけど、私は絶対にマリアじゃないって伝えないと。バレたら陛下にどんなに怒られるか……
腰のポーチから巻物と魔導羽根ペンを取り出し、いつものように巻物に字を書いていく。
書き終えた。
お手紙ならちゃんとコミュニケーションとれるんだ。昔、たくさん書きすぎてルヴェリーに1月に2通までと言われてしまったけどね。
ルヴェリーの脇に座り誠心誠意頭を下げる。
すると、ルヴェリーは飛び起き、私の頭を上げさせそうとするが、ピタリと動きを止める。
「痛くない」
ボソリとつぶやき、腕の包帯を解く。
傷一つない腕。
よし、私ナイス治療。自画自賛、今回普通の人なら3回ぐらい生き返る魔力を込めさせてもらった。これで治らなかったら、私自信なくしちゃう。
全身の包帯を無我夢中に解いていくルヴェリー。
傷一つないルヴェリーの身体があった。
心の中でガッツポーズ! よかった、自信はあったけど見るまではドキドキだったのよ。
チラ見してた私に近づき、顔を上げるよう促してくれる。顔を上げ、ルヴェリーを見つめる。
すると突然、ルヴェリーが抱きついてきた。そっと手を回しルヴェリーを受け入れる。私の胸の中でルヴェリーは泣いた。
声を上げ、ひたすら泣き続けた。強い子だけど、やっぱり女の子なのね。辛かったでしょうに、部下に弱いところは見せれないし、成せる力があるのに逃げるなんてできないし。いいよ、私の前は甘えなさい。
ひとしきり泣いてスッキリしたルヴェリーに、さっき書いた巻物を渡す。そして、もう大丈夫と伝えようとする。
「イタイの〜イタイの〜とんでった〜〜」
ん~~。この場面に合ってるか微妙、行間を読んでくれ。
と、爆弾発言がルヴェリーから繰り出される。
「マリア師匠?」
ぎぇええええええっ。なんでバレた? だって認識障害と認識妨害、ちゃんと魔力隠蔽で痕跡を消してるのにどこにバレる要素が!!
一刻も早く違うことを伝えなくては。
「よんで〜」
読むんだ。読んで納得してくれ。
ルヴェリーは私から巻物を受け取り、ぺたんと座り込んで読み出した。そうそうこの子はいつもうちに来て、私の書いたお手紙を読み込んでいた。
私のホムンクルスのショーちゃん、ロンちゃんと一緒にあーでもないこーでもないと、かしましかったなぁと思い出す。
さ〜て、この子はすっぽんぽんなのを忘れてるんでしょうね。
「ふ~ふ~ふっふっふ♫ふふふふふ~ん♪」
鼻歌交じりに、貫頭衣だった布を使ってベストとスカートを作る。
スカートだった布は自分に巻き付け、胸と腰を隠してギリギリのラインは死守。
ルヴェリーが嫌じゃなければ、替えの下着を貸してあげればルヴェリーもギリギリ大丈夫かな?
ルヴェリーが顔を上げた。
読み終わったか、ちょっと量があるからね。
でもこれで大丈夫。
私の正体もバレてない。
ルヴェリーが私を見つめる。私はもう一度謝罪の意味を込めて頭を下げる。
「マリーさん、頭を上げて。あなたは命の恩人です。本当にありがとう」
そうか。そっちがあるね。これ以上私がうじうじ悩んでたらルヴェリーも、気負っちゃうね。
私は満面の笑みを浮かべ
「ど〜いたしまして〜」
うん。久々にぴったりな言葉だと思う。
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