次の日。僕たちは、父さんの手伝いをした。
崩れた納屋の跡から、まだ使える木材を運び出す。屋根の梁だった太い角材。板壁だった長い板。焦げた物と無事な物を、より分けながら。空気には乾いた木の粉と、煤の匂いが混ざっている。陽射しの中で細かな埃が金色に舞っていた。
「これ、重い」
僕が板を抱えて言うと、
「貸して」
リディアが、反対側の端を持った。包帯の巻かれた左手は添えるだけにして、右手でしっかりと支えている。
「二人で持った方が楽だよ」
「そうだね」
二人で運ぶ。息を合わせて、一歩、また一歩。板の重みが二つに割れて、腕がすっと軽くなった。
途中で、僕は、地面に転がっていた梁に足を引っかけた。
「わっ!」
「危ない!」
リディアが、素早く僕の腕を掴んだ。
板がごとんと地面に落ちる。
身体が傾いたまま止まった。腕を掴む手は、思ったよりずっと強くて温かかった。
「大丈夫?」
「大丈夫」
「気をつけてよ」
「リディアが助けてくれたから大丈夫」
「……もう」
呆れたように言いながら、リディアは笑った。
その笑顔を父さんが、少し離れたところから見ていた。担いだ梁の向こうで、目尻を下げて微笑んでいる。
僕と目が合うと、父さんは何も言わずにまた作業へ戻った。
*
さらに次の日。庭で、母さんと一緒に洗濯物を干しているリディアを見つけた。
「リディア、手伝おうか?」
「いいよ。イルヴァはそっちお願い」
「こっち?」
「うん」
僕は、言われた通りに洗濯物を干した。
洗い立ての布はひんやり冷たくて、石鹸と水の匂いがした。皺を伸ばして、紐に掛けて、洗濯ばさみで留める。
暫くして、風が吹いた。
干した布が一斉にふくらんで揺れる。白い敷布が帆みたいに大きくはためいて、陽射しを透かした。光が布の上で水の波紋みたいに揺れる。
「わあ」
リディアが、目を細めた。風が彼女の髪を持ち上げる。
その顔がほんの一瞬だけ、昔と同じに見えた。大樹の下で風が渡っていくたびに見せていたあの顔。眩しそうで気持ちよさそうで、口の端がほんの少しだけ上がる。
僕は何も言わなかった。
リディアも何も言わなかった。
ただ二人で、揺れる洗濯物を見ていた。
母さんは少し離れたところで、籠の中の布をゆっくり畳んでいた。こちらを見ないまま、手だけがほんの少し止まっていた。
*
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